救命浮環⑥ロープ【唐津/平野】
【ロープ取り付けの背景】
救助者に救命浮環を投げて救助者が浮環を掴んだら、次は岸まで引っ張ってくる必要があります。そこで、救命浮環本体と止め具をロープで結んで、そのロープを引っ張ることで救助者を助けることを検討しました。
また、救命浮環と止め具をロープでしっかりつなぐことで、救命浮環の盗難防止になります。救命浮環が盗られてなくなっては意味がないため、ロープは取り外しができないように救命浮環としっかり結び付けます。
【救命浮環の配置】
救命浮環と止め具をロープで結んで固定したときに必要な救命浮環の設置数、ロープの長さを検討しました。救助者を助けるために必要な範囲をカバーするようロープの長さを決めなければなりません。
検討した結果、救命浮環はプロムナードのボーダーラインに合わせて設置することを基本として、設置間隔を約25mとして配置を行いました。そして、救命浮環は12基設置することに決定しました。
【ロープの長さの検討】
救命浮環の配置からロープの長さの検討をしました。岸辺を全てカバーできることを考慮すると、ロープを25mにすることにしました。そうすると、ロープの範囲が重なる部分では岸からの距離が約21mになります。転落した人は岸の近くに落ちると考えられ、岸から落ちた人に対して21mの距離があれば救助者に救命浮環が届くと考えられます。また投下実験から、大人の力で救命浮環を15m以上投げることは不可能であることがわかりました。
ロープの長さに関しては以下の3点を考慮して決定した。
①救命浮環を約25m間隔で設置してロープは25mの範囲をカバーできるようにする。
②ボラードは岸から1.5mの位置にセットバックして設置されているので、1.5m余分に確保する。
③ロープを救命浮環と止め具にアイスプライスという結び方で結ぶときに必要な長さとして0.5m余分に確保する。
以上の点から「①25m+②1.5m+③0.5m」でロープの長さを27mにすることにしました。
採用したロープの仕様に関して次に説明します。
■材質
ロープの素材は水に浮く「ポリエチレン」にすることにしました。救命浮環は海に投げて使用するものなので、ロープは水に浮く素材にしました。
■ロープのタイプ
ロープのタイプはロープを結ぶときにアイスプライスにするため「3つ打ちロープ」にしました。
■ロープの長さ 27m
上記の検討より決定しました。
■太さ
ロープの太さは「救助者をロープで岸まで引く時に引きやすくする」「ロープの強度を強くする」という2点から検討しました。
通常の救命浮環に使用されるロープは「φ4mm」であるが、それでは細いと考えました。まず、できるだけ太いロープを採用することを考え「φ9mm」のロープを検討しました。「φ9mm」のロープは太くて丈夫だが、重量は40g/mで27mになると1080gになる。重いため扱いづらいです。
次は「φ8mm」のロープを検討しました。「φ9mm」と比べるとロープの体積が減るが、重量は33g/mで27mになると891gとなり、まだロープが重く感じました。
次は「φ6mm」のロープを検討しました。「φ7mm」は「φ8mm」とあまり変化がないようにみえたため、「φ6mm」を検討しました。重量は17.5g/mで27mになると472.5gで、「φ9mm」「φ8mm」と比べて軽く、扱い使いやすくなります。ロープの太さは通常の救命浮環に使用される「φ4mm」よりも太いためロープの太さは「φ6mm」にしました。
■色
救助用のロープとしては目立たせるためにオレンジが採用されます。ロープの色をオレンジで検討してみたが、取り付けたときにオレンジが目立ちすぎました。救命浮環と一体感をもたせるためにロープは救命浮環色と合わせて「白」にすることにしました。
【ロープの取り付けの検討】
■救命浮環と止め具への結び方
救命浮環の盗難防止のため、救命浮環と止め具をロープで結んで設置することにしました。救命浮環を止め具から外して別の場所に持っていくことは想定していません。そのために救命浮環の配置、ロープの長さを検討して救助に必要な範囲をカバーしました。また、水難事故が発生した場合、落水者に救命浮環をまず掴ませることが重要で、浮環を掴んだ後の救助は岸まで引っ張ってからゆっくり行えば良いと考えられます。
そこで、結びが解けないようにするため「アイスプライス」で救命浮環のDリング、止め具のアイボルトにロープを結びつけます。
■ワイヤシンブルの取り付け
救命浮環のDリング及び止め具のアイボルトにロープを結ぶときはφ6mmのロープに対応するステンレスのワイヤシンブルを取り付けてからアイスプライスの加工を行います。これはDリング、アイボルト上でロープが移動できるようにするためです。取り付けは、ワイヤシンブルの空いている隙間からDリング、アイボルトに通します。何も使わず人の手だけワイヤシンブルを通すことは難しいため、木槌等を用いてワイヤシンブルを軽く叩きながら通します。
■ロープの設置方法
ロープの設置は「救助に使用するときはすぐにロープが解ける」「常時はロープが絡まらないように設置されている」という2点を考慮しました。
ロープの束ね方について海上保安部へ相談しに行きました。検討した結果、最もシンプルなロープの束ね方である「棒結び」を採用しました。ロープを棒状に巻くことで普段設置しているときは絡まらず、使用するときはロープを引っ張るだけでロープが簡単に解けるので一般の人にも解き方が一目で判断できて扱いやすいと考えました。